令和を駆け抜ける

誣告と讒言を憎む評論。

メモ、令和元年司法試験、知的財産法 第1問 設問1 答案

 素人が試しに特許法部分の問題一部について答案を書きました。内容については信頼しないでください。

 

第一、第1問

1、設問1

 (1)反論

 125条ただし書によれば、123条1項6号に該当し、その判決が確定したときは、本件特許は特許を受けた時から存在しないこととなる。

 そこで、123条1項6号に基づき、特許無効審判請求を行い、Xに特許を受ける権利がないことを主張する。

 35条2項によれば、職務発明にあたらない発明については、あらかじめ使用者等が特許を受ける権利を取得する定めをすることはできない。
 職務発明にあたるというためには、その発明が使用者等の業務範囲に含まれ、かつ、従業者等の現在または過去の職務にあたるといえなければならない。
 本件ではXは法人であって使用者等にあたり、甲はXの従業員であったから従業者等にあたる。
 ア 業務範囲
 業務範囲には、使用者等が現に行っている業務及び将来行うことが確実である業務を含む。
 本件において、Xは食品加工会社であって、その業務は食品の加工にある。食品の加工にあたっては加工食品の製造のために製造工程の実施およびその効率化によって営利を生じるものであるから、業務の範囲は純粋な加工食品の製造工程の実現および効率化にとどまるのあって、本件発明のように成分の測定方法の発明がXの業務に含まれるということはできない。
 イ 職務
 職務とは、業務を遂行するものであって、広く発明完成に至るまでを責務の内容とするものであり、その責務の内容には当然に予定されまたは期待されている場合も含まれる。
 本件においては、Xにおける甲の職務は研究開発にあったものの、Xは食品加工会社であって成分測定の方法についてはそもそも業務に含まれないし、責務の内容として当然に含まれるということもできない。また、甲による本件発明のための研究開発はXから期待されなかったというのであるから、「期待されていた場合」にもあたらない。
 ウ よって、本件発明は、業務範囲に含まれるものではなく、職務にもあたらないため、いわゆる自由発明にあたり、職務発明にはあたらない。
 したがって、Xは本件発明についてあらかじめ特許を受ける権利を取得することはできず、本件特許は無効である。
 (2)妥当性
 ア 業務範囲について、本件におけるように成分Pが食品に付加価値をもたらすのであり、加工食品の市場競争原理のなかで競争力をつける手段として成分Pの測定方法を研究し実施することはなんら不合理ではなく理に適うものであるから、加工食品の製造工程の実現及び効率化のみに限られるということはできない。
 よって、本件発明は業務範囲に含まれる。
 イ 職務について、Xは本件発明について期待しなかったのであるから、当然に予定されまたは期待されていたということはできない。
 他方、成分Pは一般に健康に良いとされていたのであるから、これをより効率よく測定する本件発明は食品加工会社Xの研究開発部門に勤めていた甲の職務となりえないではない。しかし、甲の上司は本件発明に反対していたこと、Xが本件発明について期待していなかったこと、本件においてXが工程aによる測定がされていたという事情もないことに鑑みると、甲の本件発明の完成が職務として負うべき責務の内容となっていたということはできない。
 ウ よって、本件発明は業務には含まれるが職務にはあたらないいわゆる業務発明にあたる。
 したがって、Xは本件発明についてあらかじめ特許を受ける権利を取得することはできない。
 エ 上記(2)ア~ウより、理由は異なるものの結論においては結局のところ同じくXは特許を受ける権利を取得することができず、本件特許を取得できない。