令和を駆け抜ける

誣告と讒言を憎む評論。

共有物の変更や管理、保存についてと共有者単独による妨害排除請求の基礎理論

共有物の変更や管理、保存についてと共有者単独による妨害排除請求の基礎理論をまとめる。

 

1、民法251条及び252条の解釈にあたってはこれら各条文に一貫した理論があるものととらえる。

 

2、251条

 251条によれば、共有物の変更にあたっては共有者全員の同意を要する。

(1)共有物の変更とは、目的物の性質や形状を変更することをいう。

具体例としては、共有物全部の譲渡、処分、これらの取消、解除がこれにあたり、山林の伐採など土地の形状の変更もこれにあたる。

(2)共有者全員の同意が必要とされる理由の説明は2通りあり、1つは持分権の行使といえども共有権の行使に外ならず、他の共有者全員の同意が要求されるとされる。

 この見解からは251条が原則を定める規定となる。

(3)別の見解によれば、持分権は各共有者の権利に過ぎず、権限付与なく権利を行使できるはずである。しかし、他の共有者に影響を及ぼすものであるから、他の共有者の同意が要求されるという。この見解からは251条は例外を定める規定となる。

(4)共有物の変更をするには、共有者全員の合意を要する。(3)の見解を採る場合には次のような説明を要する。すなわち、共有物の変更は目的物の性質や形状を変更するものであり、他の共有者への影響が大きいといわざるを得ない。そのため、251条は共有者全員の合意を要求するのである。

 

 

3、252条本文

 252条本文は、共有物の管理を定める。共有物の管理にあたっては共有者の持分の価格の過半数の同意を要する。共有物の変更におけるよりも緩やかな要件となっている。

(1)共有物の管理とは、目的物の利用・改良にあたる行為をいう。

 管理行為の具体例としては、賃貸借契約の締結や取消・解除、使用貸借契約の締結や取消・解除がある。

(2)目的物の利用・改良行為は目的物の本来の用途として権利を行使するものであり、他の共有者への影響はあるけれども、共有物の変更ほどの制限は必要ないといえる。そのため、各共有者の持分の価格の過半数で足りるとされる。

 

4、252条ただし書

 252条ただし書は共有物の保存行為について定める。目的物の保存行為は各共有者が単独ですることができる。

(1) 保存行為とは、目的物の現状を維持すること、あるいは共有者の利益を保全することを広く含む。

 保存行為の具体例には、目的物の修理・修繕、腐敗しやすいものの売却、返還請求、妨害排除請求、抹消登記手続請求などがある。

(2)共有物の価値を維持するばかりであるから各共有者が単独ですることができる。

 

5、共有者単独による妨害排除請求

 共有者が単独で妨害排除請求など物権的請求権を行使するにあたっては、2通りの法律構成がありうる。

 1つは保存行為としての妨害排除請求の行使だ。もう一つは持分権に基づく妨害排除請求権の行使だ。

(1)まず、保存行為としての妨害排除請求権の行使をみる。

 保存行為も共有権の行使を伴うのであるから、あるいは他の共有者に影響を及ぼすものであるから、原則として保存行為が共有者全員の同意のもとなされるべきである。

 この理解を踏まえたうえで、252条ただし書が例外的に各共有者が単独で保存行為をすることができるものとして権限を付与したものと理解する。

 そうすると、252条により、保存行為は共有者全員の同意のもとにしたものと同様に扱うべきであるから、その保存行為の効果も他の共有者全員の同意があるものと同様の効果があるというべきである。

 そのため、保存行為としての妨害排除請求に対する判決の既判力は、訴えを提起した共有者のみならず、他の共有者をも拘束することになる。

(2)持分権に基づく妨害排除請求権の行使は、持分権の行使は各共有者の権利行使に過ぎないものとして理解するため、判決の既判力は他の共有者を拘束しないこととなる。