朝鮮系日本人の誇り
※フィクション
私はかつて朝鮮人であった男。
私のかつての本名は金垃燕。キム・ラインと読む。17歳の頃にかつての本名を知った。
「木村つばめ」はかつての通名だった。今は本名である。
西暦2019年現在、30歳を過ぎ、嫌韓が蔓延る言論を見て胸が痛まないといえば嘘になる。
しかし、確固たる決意のもと、私は日本へ帰化したのである。
その決意とは何か。
朝鮮系日本人の誇りを取り戻す。という決意である。
いかなる過程で決意に至ったのか。
同じ立場にある朝鮮系日本人の方には是非とも知って欲しい。
私は幼少から日本の学校へ通い、日本の教育を受けながらも、朝鮮の(かつての)同胞から反日を吹き込まれた。
日本人は関東大震災の際に朝鮮人虐殺を行った。朝鮮人を蔑視し、就職にも差別をした。男は徴用工という制度で強制的に労働を科せられ、女は従軍慰安婦として強制的に連行され、性的搾取がされた。
しかし、日本人の規範意識の高さは世界水準を明らかに超えている。
古い国、裕福な国は腐るほどあるのに、日本よりも規範意識の高い国は存在しないほどである。日本と同レベルの規範意識を持つ国といえば、デンマークがかろうじてあげられる。
なにより、この目で見てきた日本人の祖父が残酷なことをできたとはとても思えない。
私は思う。
日本がかりそめの姿を世界に示し、過去の悪事を覆い隠そうとしている、などというのは間違いなく妄言だ。一夕一朝でできるものではない。
そして、そのような規範意識の高い国が朝鮮人に対して差別的であるとしたら、何か理由があるのではないか、あるいは差別にまっとうな理由がないのかもしれない。
あるいは、差別自体が嘘にまみれているのか、それとも、日本人は本当に残虐な連中なのかもしれない。
真実は誰も知らない、という現実がある。
その目で見た人しか真実は知らない。だから、言った者勝ちというのは真実ありうる。
他方で、歴史的事実は誰でも知ることができるが、その歴史的事実はほんのわずかしか真実を裏付けられないのが現実である。
そのほんのわずかの真実を大量にかき集め、日本というものが私の故郷でありながら敵であるのか、見極めよう。
19歳の頃、大学の図書館で様々な資料を読んだ。
その結果、慰安婦強制連行なるものはおよそ無理筋であると確信した。
残された資料を俯瞰するに、たんに売春婦を募集し、応募した者が業者の運営する慰安施設で働いただけの話であった。
少し詳しく例をみれば、慰安施設を運営するのは民間業者であり、売春婦募集が誘拐を惹起するおそれがあるとして、軍の監視がされるようになったという公式資料もあった。しかも、朝鮮において売春婦とするための子女誘拐事件が頻繁に起こっていたという新聞記事も残っており、その犯人は朝鮮人や中国人である。
こういった資料に目を通した結果、旧日本軍による慰安婦強制連行というのはありもしない幻想であると結論付けることになった。
あるいは誘拐は日本がさせたのだ、当時日本は朝鮮を占領していたのだから好きにできたはずだ。という者がいるかもしれないが、それこそ幻想である。
当時の日本は朝鮮に近代的な高等教育をもたらし、独自の朝鮮文字を復活させ、朝鮮人に教えてくれた。これにとどまらず道路や鉄道、建築物などの施設などを設けてくれた。これはすなわち、朝鮮の独自の発展を期待していたのであり、朝鮮の民族性を認めてくれていたのである。
ここでさらに、朝鮮の発展を期待したのは朝鮮を防波堤にするためだという指摘が想定される。しかし、莫大な血税を投入しなければ近代的高等教育にとどまらず道路や鉄道、建築物などの施設などを設けることは不可能であり、その血税の投入が正当化されるには日本の利益になることが必要なのはいうまでもなく当然のことだ。
くだらない反論を想定したために脱線したが話をもとに戻そう。
旧日本軍による慰安婦強制連行というのはありもしない幻想であると結論付けることになったのであるが、慰安婦強制連行という幻想を騒ぐようになった時期が比較的最近であることに別の理解をするようになった。
日韓併合時代を知らない世代が多数を占め始めてから、朝日新聞の報道の後に騒ぎ始めたのである。
これに気付いた時の私は、併合時代を知らないから愚を犯したのだと、ナイーブな理解をするにとどまっていた。
20歳の頃、日本に帰化するか悩んだ。
私のルーツは現在の大韓民国の天安にある。祖父が日本に渡り、同胞の女性と出会い結婚した。私の父母も朝鮮人であり、私は純粋な朝鮮人だと言っても過言ではない。
ならば、やはり日本が先祖の敵であるなら私は朝鮮人として生きよう、もし日本が敵ではないなら日本人となろう。
ここで問題となるのは何をもって敵となるか、何をもって敵ではないとなるのか。
すでに述べたように大勢は決しつつあった。
すなわち、日本は朝鮮にこれ以上ない利益をもたらしたことである。
日本が朝鮮に独自の発展を期待し、民族性まで認めていた。
これは大韓民国の理念に掲げる三・一独立運動の理念を日本が弾圧したという歴史認識に大きく悖るのである。
三・一独立運動が弾圧されたというのは日本でもいわれることがあるが、化けの皮はすぐに剥がれた。独立運動がクーデターであるというのなら、それは鎮圧されるのは単なる敗北に過ぎない。日本の警察官を殺して、日本の民間人も殺して、建物を破壊しておいて、鎮圧されることが許されないなどというのは、もはや言い分自体が成立しない詭弁であると断ぜざるをえない。
もとは独立運動は三・一独立宣言に基づくとされ、朝鮮は日本からやがて独立するという理念を掲げたものであった。そして、この理念自体は日本を責める趣旨に出るものではなく、「自然で合理な政経の大原に帰還させようとするものである」として民族の自律を標榜するものであり、日本の期待することでもあった。
次第に朝鮮総督府は副島道正とともに朝鮮自治論を検討し始めるが、当時の朝鮮人には日本人なしに国際社会を渡り合うことなど到底できるものではなかった。
朝鮮人からすれば、日本の利益など知ったことではなく、たとえ滅ぶとしても民族自決の道を選びたかったかもしれないが、大韓帝国の高宗皇帝は一枚上手であった。
高宗皇帝は外交政策に失敗を重ねてしまい、今後の朝鮮人を守るためには日本との併合が最善の手であるとみたのである。
当時の朝鮮人は高宗皇帝が日韓併合を決めたことについて脅されて仕方なくしたものと決め込む者がいたが、そのような者は不遜な輩にしかみえないうえに、一部の過激な連中であった。ちなみに、李承晩ラインで竹島問題の争いの種を残したことで知られる李承晩は高宗皇帝陛下の退位を要求していた。
私は思う。
我が一族の大本である大韓帝国において、高宗皇帝がお決めになった日韓併合という政策は、私の目から見ても妥当な決断であり、朝鮮に莫大な利益をもたらしたのである。
高宗皇帝は日本に身を委ねた。
私も委ねようではないか。
早すぎる独立宣言は理念として立派だが、独立運動という名のクーデターを起こした連中はただの犯罪者である。
私の先祖の地、天安は現在大韓民国である。大韓民国は国際的な振る舞いを見る限り、一貫して李承晩的である。高宗皇帝的ではないのである。
もう、彼の地に私の居場所はない。
今なら、帰化要件も緩い。日本のような単一民族国家で多くの利益を受けられる国ならば、もっともっと要件が厳しくてもおかしくないのに比較的緩い。いつ厳しくなるかわかったものではない。
日本へと帰化しよう。
朝鮮の正しい誇りを継承し、日本人としてほまれある人物になろう。
朝鮮だからというだけで一緒くたにして叩く間抜けなど捨て置けばいい。
日本人よりも日本を愛する愛国者になろう。
日本人となれば、私は朝鮮系日本人だ。
かつての祖国の傍若無人な振る舞いと、自虐史観にまみれた日本のせいで、これ以上ないくらいに傷ついた朝鮮系日本人の誇りと名誉。
朝鮮系日本人の誇りを取り戻す。
こうして、私は紆余曲折を経て25歳の時に日本人となった。
比較的最近になって、慰安婦強制連行が騒がれたり、徴用工が騒がれたのは、併合時代を知る人がいなくなったから。
それは一応事実である。
しかし、韓国の人々は知らないために愚を犯しただけという単純なものではないらしい。
「独立宣言」ではなく「独立運動」が憲法の理念に掲げられることもおかしい。
韓国の憲法は複数回改正されている。
変な影響を受けているように見える。それは李承晩のせいだと思っていたが、それだけでここまで深刻なことになるだろうか。
日韓を断絶させて笑うのは誰か。そう考えるのはいわゆる陰謀論であって説得力がないといわれがちである。
陰謀論が説得力を欠くのではない。状況証拠だけで論じるから、多くは決定的な説得力がないのが陰謀論である。しかし、その状況証拠がそろえばそろうほど説得力を増すのが陰謀論なのである。
GSOMIA破棄の撤回を笑う自称愛国者を見て、日韓断絶を笑う者としかめる者の攻防の結果だと思う私としてはやや不謹慎に思うのである。
ただ私としては、しかめる者が勝利してよかったと胸をなでおろすのである。
※フィクション
あとがき
筆者は残念ながら純粋な日本人です。
木村つばめ君に不謹慎な奴めという目で見られている側のありふれた日本人です。
なぜ私がこの「朝鮮系日本人の誇り」という自伝風短編小説(?)を書いたかというと、朝鮮人だから悪なんてことはないし嫌韓は無理からぬところだけど、色んな立場に立ってみることで自分の歴史観というのは更なる深みと説得力を持つようになるということが言いたかったからです。
拙い文ですが読んでくれてありがとうございました。
真の愛国者への道は険しく遠いです・・・。
更なる高みを目指してこれからも頑張ります。
どうぞ私もあなた様と共に頑張れたらと思います。